【コラム】ペットロスとグリーフワーク
このページをご覧になっている方の中には、過去に愛するペットとの悲しい別れを経験した方や、 いつか来る別れの時を思って不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
深い悲しみ、寂しさ、後悔、自責感、絶望・・・。愛するものを喪った時、わたしたちはさまざまな痛みを感じます。まるで自分の心や身体が引き裂かれるような強い悲しみや嘆き。それは「グリーフ」(悲嘆反応)と呼ばれるもので、心だけでなく、身体や思考などにもさまざまな反応(変化)をもたらします。突然襲ってくる悲しみに自分気持ちがコントロールできなくなったり、夜眠れない、食欲がないといった身体症状がでたり、集中力がなくなって注意力散漫になったりなど。普段とは異なる自分に戸惑うこともしばしばです。いわゆる「ペットロス」とは、喪失の対象がペットであるグリーフのことを指し、愛情で結ばれた絆が死によって引き裂かれ、断ち切られたとき、わたしたちに起こる自然な反応なのです。
生きていく以上、愛するものとの別れは誰しもが経験しなければならないことです。その別れの形は状況によってさまざまだと思います。しかしペットを愛する私たちが感じる悲しみの質は、とても似通っているのではないでしょうか。愛しているからこそ、悔やみ、苦しみ、悲しむ・・・。しかし見方を変えてみれば、それほどまで愛し愛される存在と巡り会い、絆を深められるということは、奇跡のように素晴らしいことなのかもしれません。
「虹の橋」という詩をご存じの方は多いでしょう。作者不詳のまま世界中の多くの動物サイトに伝わっている詩です。人間と心から愛しあっていた動物は、もはや痛みや苦しみから解放され、一番元気なときの姿に戻って、天国の手前にある虹の橋で、愛する人といつかまた出会える日を待っている、といった内容です。
そしてもう一つ、本サイトに寄稿してくださった作家の悠埼仁さんが書かれた「涙の滝の国の物語」。 肉体をなくしたすべての動物たちが往く「涙の滝の国」。そこでは人間が亡くなった動物を想って流す涙は雨となって降り注ぎ、やがて大河となり滝となり、彼らの渇きを癒します。彼らは人間たちの変わらぬ愛情を感じながら、その国でいつか自分を愛してくれた人と再会する日まで楽しく暮らしているのです。亡くなったペットとの、今も続く絆を感じさせてくれる一冊です。
愛するものとの別れという悲しみは、完全に癒えることはなく、何年たっても、いつも心のどこかしらが悲しく寂しいものです。しかし亡くなったペットの存在は、その悲しみごと、いつしかわたしたちの一部となり、これからも共に生きて行ってくれるのだとは言えないでしょうか。それは新しい絆の形・・・。
愛するものを喪い、悲しみ嘆くことは当然のことです。そしてまたその悲しみから回復する力をわたしたちは持っているのです。必要なのは喪失体験によって呼び起こされた諸々の感情を整理し、その喪失を受容していくためのプロセスを通り抜けていくこと。「グリーフワーク」と呼ばれるこの作業は、とても大切なことですが、その道筋は一人でたどるには辛すぎるかもしれません。そんなときは、どうぞ皆さんの周りにいる大切な人々からの支えを受け取ってください。そしていつか順番が来たら、今度は皆さんがそのお返しをしていただけたらと思います。